【顎・頤】身体の慣用句とその使い方・例文

【顎・頤】身体の慣用句とその使い方・例文

今回は「あご」を使った慣用句をまとめていきたいと思います。あごにも漢字が2種類あり「顎」と「頤」の両方が使われています。ちなみに、「頤」は漢検1級の漢字で「おとがい」「あご」「やしな(う)」などと読みます。単純に顔の下の部分を示すだけでなく、育てるといった意味もある漢字なのが面白いところ。

とはいえ日常生活で見かけることはほぼ無いでしょうから、折角なのでここで覚えておくのも良いかもしれません。というわけで、早速見ていきたいと思います!

「顎」を使った慣用句

顎が落ちそう

「顎が落ちそう」とは、味が非常によく美味であるというたとえで使われる慣用句。「頬が落ちる」と同じ意味で使われますね。

例文
私のカレーは普通に作っているだけだが、食べた人は「顎が落ちそうだ」と言ってくれるのでお世辞でも悪い気はしない。

顎が外れる

あまりにも面白くて、笑いすぎた時によく使われるのが「あごが外れる」でしょう。笑い転げてお腹が痛いくらいの面白さの時に使うと◎

例文
お笑い番組を見てあごが外れるほど笑ったのは久しぶりだ。

顎が干上がる

生計が立ち行かなって食べられなくなることを「顎が干上がる」と言います。「口が干上がる」と同じ意味ですね。

例文
その技術を持っていなければ、私は顎が干上がるに違いない。

顎で使う

他人に対して見下して偉そうな態度で人に指図したり、顎を使って指示することを「顎で使う」と言います。これされるとめっちゃ腹立つんですよね。でも実際にこんなことする人に出くわす確率はかなり低いと思いますよ。

例文
先輩は新入部員を顎で使うことで、自分は偉いと勘違いしているのではないか。

顎を出す

とても疲れたさまを表現する言葉が「顎を出す」ですね。前に進もうとしても足が前に出ず、あごが前にでる様子から来ているようです。非常に疲れたという意味で活用するといいでしょう。

例文
久しぶりにランニングをしたら、徐々にペースダウンして30分あたりで顎を出すのがやっとという速さになってしまった。

顎を撫でる

満足したり得意なようすを表すのが「顎を撫でる」ですね。同じような意味の「髭を撫でる」もありますが、ヒゲがない人には「顎を撫でる」を使いましょう。もっとも、最近では髭を伸ばしていない人がほとんどですので必然的に「顎を撫でる」を使うことになるわけですが。

例文
100マス計算のプリントを目の前にして、兄は顎を撫でて余裕ぶっている。いざはじめてみると最初の方で躓いて考え込んでしまった。

顎が落ちる

これは最初で紹介した「顎が落ちそう」と同じですね。美味しいものを食べた時に使いましょう。

例文
あの料亭の料理は顎が落ちるほどの絶品ばかりだ。君も一度食べに行ってみると良い。

顎が食い違う

思っていたことにならず、見当が外れることを「顎が食い違う」といいますね。見立てが外れると失敗したという気持ちが強くなりますが、焦らず軌道修正することが必要ですよ!

例文
この商品を100円で仕入れて200円で売れば100円の儲けだ…と思っていたが、現実は税金が絡んでいるため顎が食い違うことに気づいた。商売というものは難しいな。

顎で蠅を追う(あごではえをおう)

衰弱して体力がなくなり顎くらいでしかハエを追えない、という意味で「顎で蠅を追う」は使われます。病気やケガで体力がなくなった時などに使うと良いでしょう。

例文
彼はひどい風邪を引いて一時は顎で蠅を追うくらいの体力だったいが、あれから一気に回復して今はピンピンしている。

顎振り三年

尺八の稽古は首を振りながら上手く吹けるようになるまで三年はかかる、ということから転じて何事も上達するには長い年月とコツコツと積み上げる努力が必要だということを意味するのがこの「顎振り三年」です。「首振り三年」とも。

現在では1000時間費やせば大抵のことには習熟できるといわれています。一日3時間練習すると過程すると、1000時間は約1年。3年ということは3000時間ということになりますね。とはいえ、楽器などの練習はそれ以上に時間を費やす必要がありますのでもっとかかるはずですよ。しかしこれだけやれば間違いなく初心者でも中級者以上には上達するでしょうね。

例文
石の上にも三年、顎振り三年、ようやく晴れの舞台に立つことが出来て私はとても嬉しいです。

顎を外す

これは「顎が外れる」と同じ意味ですね。大笑いすることのたとえ。

例文
久しぶりに腹を抱えて顎を外すほど笑った。やはり友達と一緒に過ごす時間は楽しいものだ。

頤が落ちる(あごがおちる)

この慣用句はあごの漢字が違いますが「顎が落ちる」と同じ意味です。他に、非常によく喋ること、寒くて震える、といった意味がありますね。

ただ「頤」という漢字を現在ではほぼ使わず「顎」に置き換えられて使われています。同じ意味の慣用句は他にも

・頤で蠅を追う
・頤で人を使う

がありますね。「頤」を使った慣用句はほぼ使われないので、考程度に見ておいてください。

頤の雫(おとがいのしずく)

自分の近くにあるのに、自分の思うようにならないことを「頤の雫」と言いますね。あごについたしずくは口に入らない、というところからきた言葉だとか。右手で右手首をつかもうと思っても掴めないという話とちょっと似ていますね。

「顎の雫、口に入らず(あぎとのしずく、くちにはいらず)」という言葉もあります。こちらも同じ意味なのでセットで覚えておくと良いでしょう。

例文
僕は幼馴染に好意を抱いているが、彼女の方は僕に対して恋愛感情はないらしい。顎の雫、口に入らずというが、どうにかして振り向かせることは出来ないだろうか?

頤をきく(おとがいをきく)

よく喋ることをののしって言うのが、この「頤をきく」ですね。ただし現在は「口を叩く」に置き換えられて使われることのほうが多いです。

頤を叩く(おとがいをたたく)

こちらも上記と同じ意味。つべこべと減らず口を叩く…といった意味でとして使われたのだろうと思います。

頤を解く(おとがいをとく)

あごが外れるほど大笑いする、という意味で「頤を解く」は使われていたようですね。

頤を鳴らす(おとがいをならす)

これは「頤をきく」「頤を叩く」と同じくよくしゃべる、減らず口を聞く、といった意味のある言葉です。

頤を養う(おとがいをやしなう)

「頤を養う」は生計を立てるの他に、他人を養ってやるという意味がありますね。

まとめ

はい、というわけで顎に関する慣用句をまとめてみました。たくさんあるように見えて、現在では使われない「頤」を含んだ慣用句が多かったですね。「頤」を「顎」に置き換えただけのものもいくつかあり、時代が変わっても意味合いはそのまま通じるものばかりなのが興味深いところ。

「頤」は漢検1級レベルの漢字なので日常生活で見かけることはまずありません。もし見かけたらラッキー!と思っておきましょう!

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